「バイオリンみたいなキザな楽器、自分には合わないな」って思っている方へも、ぜひ読んでいただきたいです。
バイオリンは上流階級の楽器ってイメージがありますが、そんなこともないと思います。
もちろん優雅で美しいクラシック音楽には欠かせませんが・・・。
ディズニーランドではいつもおとぼけ役のグーフィーも、意外に(?)バイオリンが上手。
サザエさんの夫である、マスオさんの趣味。
映画「タイタニック」では、沈没する最後まで演奏し続けるバイオリン奏者が印象的ですが、貧しい3等客室でのパーティーの陽気で楽しい音楽、そこでも「陽気なバイオリン」が大活躍。
あとこれはお客様よりいただいた情報ですが、「ピノキオ」に出てくるゼペットじいさんの部屋には、バイオリンがケースにも入ってないで無造作に置いてあるそうです。ふと思い立ったら、手にとって好きな曲を弾けそうな感じです。
なんたってバイオリンの音色はとってもきれいですよね。
バイオリンは難しいというイメージもありますが、たしかにはじめからきれいな音は出ないでしょう。
まわりが迷惑しようが(^^;)、自己満足でも良いと思います。
ドラえもんのヒロイン、あの可憐なしずかちゃんでも、バイオリンの演奏はジャイアンの歌声に匹敵する攻撃力を持っています。
それでも、やっぱりしずかちゃん自身はとっても気持ちよさそうに演奏するんですよ。
それではそろそろ本題に・・・。
バイオリンはなんと約4世紀半も前に、ほとんど完全な形で登場した長寿楽器です。
狩猟や戦争に使われていた物騒な弓からヒントを得て、対照的に優雅なバイオリンとして発展した説もあります。
ヨーロッパ音楽で多く使われ、16世紀末まではダンスや歌の伴奏に使われるような民衆の楽器でしたが、その優雅な音色が認められて宮廷のオーケストラに多く取り入れられました。
その後大きく発展し、アジアから日本へも広まりました。
たったの400g程度しかない、鍵盤もフレットもないごく簡単な構造の木箱に弦を張っただけの楽器で、実際に初めて手に取ると、その軽さと単純な構造に驚くことでしょう。
しかし、その音色は人間の声にとても近いと言われ、人の耳にもっともなじみやすく、長時間聴いても飽きない音を持っています。
また、弾く者の感情を自在に表現し、そして聴く者を深く魅了します。
ごく小さい音から大きい音まで、音の強弱が自由自在で、早いパッセージも演奏でき、音域も4オクターブ以上で広く、長く音を続けることもでき、ピアノのように音階や音程にも拘束されず、美しいビブラートも自由自在に表現できる、たいへん優秀な楽器と言えるでしょう。
小さな楽器ですが、かすかな弦の振動をも美しい音で伝える「力」、微妙な弓のタッチによる正確で純粋な音を引き出せる「繊細さ」など、すばらしい能力を持った楽器です。
弦楽器の中でもバイオリンはもっとも明るく華やかな音色を持っており、オーケストラでも主要なメロディーを奏でることが多く、中心的な役割を担います。
おもしろいのは、高品質なバイオリンは、年月を重ね弾き込むほどその性能や価値が上がってくることもあるのが特徴です。
これは、乾燥して軽くなること、木材の繊維が結合すること、ニスがしみ込んで弾力性が上がること、そして、演奏による楽器自体の振動により木材の余分なストレスが分散され、優れた共鳴体として材質特性が変化することなどによるものです。
ただしあくまで、はじめから材質や作りなどが高品質なもので、丁寧で正しい取り扱いやメンテナンスがされてきたものに限ります。
また、いずれピークを過ぎたものは性能は下がっていくものです。
古くからたくさんの名器と言われるものが製作され、ストラディヴァリウスやガルネリなどの名は、バイオリンを弾かない人でも聞いたことがあるかもしれませんね。
その他、それらの名器は「オールドバイオリン」と呼ばれ、何百、何千万、何億円という価格で売り買いされます。
ただこのオールドバイオリンは、詳しくは書きませんが、長年の取り扱いや修理により健康状態が悪いものも多く、注意が必要です。
余談ですが、過去にNHKの番組で、ストラディヴァリウスのバイオリンが本当に良いのかという実験がされました。演奏者が7台のバイオリンを弾き、その音のみを聞いた6人の審査員がストラディヴァリウスを当てるといった内容です。結果、見事当てた人は誰もいませんでした。
これは決してストラディヴァリウスが良くないといったことではなく、バイオリンとはこういった楽器で、耳だけでは完全には判断できないということなのです。
また、2008年にテレビ朝日で放映された「芸能人格付けチェック」では、総額23億5千万円の弦楽器を総額25万円の弦楽器と聴き比べて当てるといった企画がありましたが、正解者は6人中3人でした。私どもは仕事上もちろん即座に正解が判断できましたが、短時間の演奏を聴いただけで楽器の性能や優劣を判断するのは難しく、ある音色に対して受ける印象も個人差があります。
それでも、誰でも慣れてきますと、バイオリンが感情豊かに歌うような音の響きを理解できるようになり、演奏が上達すればするほど、それを強く望まれるでしょう。良質なバイオリンの音の響きは、心の底から、また身体全体で打ち震えるほど感動的です。
ただし、楽器を選ぶときは音も重要ですがそれだけでなく、材質、製法、仕上げ、健康状態などを判断することも重要です。
このコラムがそのためのお役に立てれば幸いです。