あご当てとは、バイオリンを構える際にあごを乗せるパーツです。
バイオリンが登場した頃には、あご当てはありませんでした。胸に当てて演奏していたのです。
より演奏しやすくなるよう、後から発明されたパーツです。
材質は基本的に木材で、エボニー、ツゲ、ローズウッドなどがありますが、糸巻きやテールピースなどと同一の材質で統一するのが一般的です。
安いものではABS樹脂製のあご当てもあり、見た目の安っぽさや音響特性の面でも木材より劣る欠点がありますが、清掃しやすいといった長所もあります。
また、金属アレルギーや木材アレルギーでお困りの方のために、アレルギー対策が施されたあご当てもあります。
形状も様々な種類があります。
あご当ては、バイオリン本体に金具で挟み込むように固定されていますが、使用していくうちに、あご当ての固定が緩んで外れてしまうことがあります。
また、あご当てを交換したい場合などは、以下のように行います。
ほとんどのあご当ての金具は、左の写真のように縦長形状のネジ式になっています。
その縦長の金具をよく見ると、それぞれに小さな穴があいています。
この穴に細い棒を差し込み、金具を回して緩めたり締めたりすることができます。
ちなみに写真右下の針金を曲げたようなものは専用工具です。
専用工具を使わなくても、キリ、太い針、安全ピンなどで回すことができます。よく見かける安いドライバーセットに入っているキリでも十分ですが、穴に差し込みすぎてボディ側板に傷を付けないよう、十分にご注意ください。
また、金具を締めすぎると、側板に歪みができてしまいます。
最悪の場合には木材が割れる可能性もありますので、締めすぎないよう注意が必要です。
それらの防止策として、指の力でできるだけ回し、最後に細い棒を差し込んで少しだけ回します。
その際、あご当てを手でさわってみて、がたつかない程度まで締め付けます。
以上の取り付け構造上、あご当てが突然外れてしまうのは仕方の無いことですが、構造をよく理解した上でお取り扱いいただければと思います。
この縦長の金具について、もう少し補足します。
もし、この金具のネジ部分を緩みきってバラバラになってしまった場合、取り付けるのに戸惑うかもしれません。
両端にネジがある構造上、上側が通常回転のネジですが、下側は逆ネジになっているのです。
焦らずにそれを念頭に置いて、冷静に締めていけば元通りになりますよ。
また、ボディと接触する面には、薄いコルクが挟んであることが多いです。
あご当て交換作業時に、このコルクが破れたり劣化したりすることでボロボロになってしまいましたら、文具店やホームセンターで入手できる薄いコルクシートを切って交換しましょう。
古いコルクがボディに付着してしまった場合には、ニスを傷めないようコルクを削り取ります。
それから、意外に気付かないことも多いのですが、左の写真のように、あご当てとテールピースが接触してる場合、特定の音の響きを止めてしまうことがあります。
当店では、発送前の調整時にこの点についても確認していますが、使用しているうちにあご当ての位置がずれる可能性もあります。
たまにはあご当ての位置をチェックするようにして、もしもあご当てがずれて接触してしまっているようでしたら、一旦金具を緩めて接触しない位置にずらしてください。
また、本ページの一番上の写真のようなオーバーテールピースタイプ(テールピースを跨ぐタイプ)のあご当てを装着し、万が一どうしてもあご当てとテールピースが接触してしまう場合には、あご当ての接触する部分を削り取る必要があるでしょう。
その場合には、一旦あご当てを取り外し、木工用のやすりやサンドペーパーで該当部分が広がるよう削りましょう。ある程度削ったら装着してみて、まだ接触するようならまた取り外して削ります。接触しないようになるまで様子を見ながら作業を繰り返します。
このように、もしあご当てを新しく交換する場合には、ある程度ご自身での加工作業が必要となることがありますのでご注意ください。