松脂(まつやに)は、松から取れる樹液を固めたもので、透き通った茶系の色をしています。
ただ固めただけではもろいため、ひまし油などの柔軟剤が入っています。
それでももろく、少しぶつけただけで割れたり、普通に塗っているだけで大きく欠けたりすることもあるでしょう。そのように弦楽器用の松脂は簡単に割れてしまうものですが、余計な成分や不純物が入っていない証でもありますのでご安心ください。
大きく2つに割れたときなどには、割れた面を熱で溶かしてくっつけることもできますよ(ただしやけどには十分ご注意下さい)。
はじめての方に時々ご質問をいただきますが、新品の弓でそのまま演奏しても音は出ません。
音を出すためには弓毛に松脂を十分に塗る必要があります。
弓毛のキューティクルの凸凹に松脂を塗ることにより、細かいギザギザが無数にでき、そのギザギザの一つ一つが弦を弾き、無数の音を出し続けるという仕組みです。
これを正しいボーイング、すなわち弦にかかる弓の圧力を均等にして、弓をスムーズに動かすことにより、美しい音になります。
弓毛に松脂を塗る作業は、初心者の方は戸惑うこともあるかもしれませんが、バイオリンをスタートするに当たり、ぜひともご経験いただきたい「儀式」のようなものでもあります。
どうしても自信が無い場合には、当店にて松脂を塗った状態で商品を発送させていただいても結構ですので、ご希望でしたらご注文時に遠慮なく申し付けください。
それでもできましたら、決して難しくはありませんし、ぜひぜひご自身にてチャレンジしてください。以下に詳しくご案内します。
基本的には松脂の上で、弓を動かして端から端までまんべんなく塗っていきます。
右手に持った弓の毛を、左手に持った松脂に乗せて、焦らずじっくり、擦り付けるようにゆっくりと動かします。
このとき、適度にある程度の力を掛けて動かしますが、例えて言えば、少し強めに窓を拭くときくらいの力で結構です。
あまりにギュウギュウゴシゴシと強く押し付けて擦ると、弓の先端を折ってしまう原因になる恐れがありますので、十分にご注意ください。
擦ると松脂表面が白い粉末のようになります。
弓毛に松脂を「塗る」というよりも、その「粉を付ける」といった表現のほうが分かりやすいかもしれません。
松脂の同じ部分ばかりを塗ると、その部分だけがすり減ってきますので、松脂を時々回転させながら塗るのが効果的です。
弓毛にはじめて塗る場合は、根気よくしっかりとたくさんの塗り込みが必要です。
弓毛に松脂を塗る動作を最低でも何十往復、百往復以上行うこともあります。
松脂が塗れてくると、最初はスースーと抵抗が無い感触であったのが、徐々に抵抗感を感じられることでしょう。
弓毛の表面も白くなってきますが、時々弦を弾いてみて音の出具合を確認しましょう。
さて、新品の松脂の表面はツルツルですので、なかなか塗ることができなくて困ることがあります。
そんなときの対策として、松脂の表面に、サンドペーパーやカッターナイフ等で細かく傷を付けることにより、かなり塗りやすくなりますので、お困りの時はぜひお試し下さい。
何十往復以上と繰り返す始めのうちは、松脂表面にできた粉がなくなるたびに、サンドペーパーなどで削るのも有効でしょう。
弓毛を触ることは基本的に厳禁ですが、指で触ってペタッと貼り付くくらいまで塗ります。
一度塗ってしまえば、2回目以降は少し塗るだけで大丈夫ですのでご安心下さい。
演奏後、バイオリンの表板表面に白い粉がたくさん降りかかる場合は松脂の塗りすぎです。
必ず表板の松脂をクロスで拭き取り、弓は先端を指ではじいて余分な松脂を落とすか、しばらく松脂を塗らずに使用します。
弓毛をクロスで拭き取ることはよくありませんのでご注意下さい。
お値打ちなセット商品に付いている松脂は、コストダウンのためあまり良質とは言えませんので、できましたらすぐにでも交換されることをおすすめいたします。
値段も様々ですが、やはり高価なものほど良質になり、音質や扱いやすさも優れています。
一度買えばかなり長持ちしますので、できるだけ良いものを用意されることをぜひおすすめします。
当店の取扱商品で、おすすめの松脂を教えてくださいとのご質問をよくいただきます。
松脂販売コーナーを見ると、たくさんの種類がありますので、迷っちゃいますよね。
あくまでも個人の好みによりますが、人気度やお手頃価格帯も踏まえて、あえて申し上げますと・・・、
できましたら音質面でたいへん評価の高いアルシェ、べとつかず扱いやすさでも好評のベルナルデルあたりをおすすめします。